完済した業者から順に過払金請求する方法について

更新日 2023/10/27
この過払金コラムを書いた弁護士
弁護士 羽賀 倫樹(はが ともき)

出身地:大阪府出身、奈良県育ち。出身大学:大阪大学法学部。

はじめに

過払金調査・請求をご相談いただく方の中には、ご相談時点で一切の借入がない方、完済している業者と債務が残っている業者の両方がある方、完済している業者はない方など、様々な方がいらっしゃいます。この中で、完済している業者と完済していない業者の両方がある方から、完済している業者だけ過払金調査・請求をして、債務が残っている業者は、完済後に過払金調査・請求をしたいとの希望をお聞きすることがあります。

このページでは、完済した業者から順に過払金請求する方法を希望する理由や問題点の有無について見ていきます。

完済した業者から順に過払金請求する方法をとる理由

完済した業者から順に過払金請求をしたいという理由には、下記のようなものがあります。

 

  • 債務が残っている業者から今後借入する可能性がある
  • 債務が残っている業者について手続きをすると信用情報に影響が出る可能性がある
  • 業者への返済に問題は生じていない

以上のような理由には一定の合理性があり、過払金調査・請求をする方が希望されるのであれば、完済した業者から順に過払金請求する方法をとることは特に問題がないようにも思えます。しかしながら、この方法は他の債務との関係で問題が生じる可能性があるため、取ることができないのが原則とされています。以下、その理由等について記載をしていきます。

完済した業者から順に過払金請求する方法の問題点

完済した業者から順に過払金請求する方法の問題点は、以下のようなものが考えられます。

 

  • 完済した業者から過払金を回収し、他の債権者のうちの一部への返済に回した後で、返済しきれなかった債務が原因となって破産に至ると、上記返済が偏頗弁済となる可能性があり、免責が認められなかったり、否認手続きの問題が生じる可能性があること(破産法252条1項3号・162条)
  • 回収した過払金を債務が残っている業者への返済に回せば経済的再生を図れる可能性があったにもかかわらず、返済に使わなかったために経済的再生を図ることができなくなる可能性があること

完済した業者から順に過払金請求する方法の問題点は以上のようなものですので、以上の問題が発生しない場合には、完済した業者から順に過払金請求しても問題はないと言えます。例えば、他の債務が1件のみの少額のもので、過払金請求をする人の収支・財産状況等から見て約定通りの弁済をするのが容易である場合であれば、完済した業者に対する過払金請求を先に進め、債務が残っている業者については完済後過払金請求をすることは問題ないと考えられます。

逆に、他の債務が複数社で数百万円あり、支払が遅れている業者がある状況で、完済した業者に対する過払金請求を先に進め、債務が残っている業者については完済後過払金請求を進めようとするのは問題があります。当事務所では、このようなケースであれば、完済した業者のみ過払金請求をするという手続きはお受けしておらず、他の債務の整理も含めて手続きをお受けしています。

弁護士によるまとめ

複数の貸金業者から借入があり、一部だけ完済したので、完済した業者だけ過払金調査・請求をしたいというケースはよくあります。ただ、この方法を取るには、借入が残っている業者についての契約条件・借入額・毎月の返済額や、収支・財産状況等を考慮する必要があり、完済した業者だけを対象として過払金調査・請求をするのはできないのが原則です。しかし、完済した業者だけを対象として過払金調査・請求をできることもありますし、債務整理とあわせて完済した業者の過払金調査・請求をすることはできますので、まずはお問い合わせください。
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