破産手続きにおける過払金の取扱い

更新日 2023/04/01
この過払金コラムを書いた弁護士
弁護士 羽賀 倫樹(はが ともき)

出身地:大阪府出身、奈良県育ち。出身大学:大阪大学法学部。

はじめに

過払金請求をする方の中には、他に借り入れがあるという方もいらっしゃいます。他の借入が少額で返済に問題がないのであれば、債務整理の必要はないと言えますが、借入が大きい場合は、破産等の債務整理を検討する必要があります。このページでは、破産手続き上過払金がどのように取り扱われているか等について見ていきます。

破産手続きにおける過払金の取扱い

当事務所は、大阪・京都・神戸に事務所があり、大阪の裁判所に破産の申し立てをするケースが多いため、大阪地方裁判所における破産手続きの際の過払金の取扱いについて見ていきます。大阪地裁では、過払金を回収済みであるかどうかで、取り扱いが分けられています。

 

(1)過払金を回収済みの場合

 

破産申立時、過払金を回収済みの場合は、現金・普通預金と同じものとして扱われます。大阪地方裁判所では、現金・普通預金が50万円以下であれば、破産管財事件ではなく、基本的に書面審査となる同時廃止の扱いが認められています。そのため、回収した過払金から相当額の弁護士費用またはやむを得ない生活費等の有用の資に充てた部分を除いた金額+過払金以外の現金・普通預金が50万円以下の場合、破産管財事件ではなく、同時廃止の手続きが認められます。一方、回収した過払金から相当額の弁護士費用またはやむを得ない生活費等の有用の資に充てた部分を除いた金額+過払金以外の現金・普通預金が50万円を超える場合、破産管財事件になります。

 

(2)過払金回収未了の場合

ア 回収未了の過払金の額面額の合計が30万円未満の場合

破産申立時、回収未了の過払金の額面額の合計が30万円未満の場合、回収したとしても、回収の際の交渉による減額、回収費用等を考慮すれば、20万円未満と同視できるものとされています。大阪地方裁判所では、現金・普通預金以外の一定類型の財産について、項目ごとに20万円未満であれば、破産管財事件ではなく、同時廃止の扱いが認められています。そのため、回収未了の過払金の額面額の合計が30万円未満の場合、破産管財事件ではなく、同時廃止の手続きが認められます。

 

イ 回収未了の過払金の額面額の合計が30万円以上の場合

破産申立時、回収未了の過払金の額面額の合計が30万円以上の場合、回収の際の交渉による減額、回収費用等を考慮したとしても、20万円未満と同視することはできないものとされています。そのため、回収未了の過払金の額面額の合計が30万円以上の場合、破産管財事件になります。

 

(3)破産手続きで手元に残せる過払金

破産手続きは、負債を0にする代わりに、財産も手放すのが基本的な考え方です。しかし、全ての財産を手放すとなると、破産する人が経済的に再生できなくなる可能性があります。そのため、自由財産拡張という手続きで、原則として最大99万円までの財産を手元に残すことができるようになっています。過払金も同じで、他の財産と合わせて99万円まで手元に残すことが可能です。逆に言うと、99万円までしか残すことができず、それ以上の過払金は破産手続きにおいて手放し、債権者への配当に回されます。

 

(4)破産手続きにおける過払金の取扱いのまとめ

破産しようという方に過払金がある場合、過払金が財産と扱われ、過払金の額が大きい場合は、破産管財事件となって、手続きが複雑化してしまいます。過払金回収費用や生活費等に使った部分を除いて150万円程度以上の財産があると、破産手続きにおける配当が行われることがあり、破産手続きがさらに長期化してしまいます。過払金がいくら多くあっても、手元に残せるのは99万円までですので、あまり大きな過払金があっても破産手続が複雑化・長期化するだけで、破産する人にとってメリットはないとも言えます。

破産手続き以外の方法

債務整理手続きは破産だけではなく、個人再生・任意整理もあります。債務額が大きく破産せざるを得ないと考えていた方について、多額の過払金が回収できたため、破産ではなく、個人再生・任意整理の手続きに切り替えることがあります。個人再生であれば、破産と違って財産を手放す必要がないというメリットがあります。また、任意整理であれば、財産を手放す必要がないことに加え、手続きが簡略になり集めるべき資料が少なくて済む、裁判所に出向く必要がなくなる、官報に載ることがなくなる、信用情報に掲載される期間が短くなる等のメリットがあります。

上記(4)では、あまり大きな過払金があっても破産手続が複雑化・長期化するだけで、破産する人にとってメリットはないと記載しましたが、破産手続きを回避できるだけの過払金があれば、債務整理をする人にとってメリットがあることになります。

個人再生・任意整理のご紹介

 

個人再生(民事再生)については、以下のURLをご参照ください。

https://786730.com/personal/law/debt_workout/

 

任意整理については、以下のURLをご参照ください。

https://786730.com/personal/law/debt_workout/voluntary_liquidation/

 

債務整理全般と過払金の関係

弁護士に手続きを依頼する場合、借入が少額で返済に問題がなければ、債務整理をせず、過払金の手続きだけを進めることができます。一方、借入が多額で返済が苦しいという場合、債務整理をせず、過払金の手続きのみを進めることは出来ません。

当事務所でも、債務の支払いが苦しいという方が、過払金の手続きを進めるのであれば、債務整理も同時に進める必要があると考えています。債務の支払が苦しいという方は、過払金とあわせて債務整理についてもご相談ください。

過払い金にいて相談したい方は、お気軽にお問い合わせください。
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