過払金請求のタイミング

更新日 2023/08/31
この過払金コラムを書いた弁護士
弁護士 羽賀 倫樹(はが ともき)

出身地:大阪府出身、奈良県育ち。出身大学:大阪大学法学部。

はじめに

過払金調査・請求の際に、「過払金は完済してから請求している人が多いのでしょうか」と聞かれることがあります。過払金を請求しようと思っているものの、なかなか完済に至らない場合に、他の人がどのタイミングで過払金請求をしているか気になる方が多いのだと思います。

この質問に対する答えですが、2010年頃は、消費者金融やクレジットカード会社からの借入が残っている状態で過払金請求をする方がかなり多かったといえます。しかし、2023年時点では、ほとんどの場合、完済してからの過払金請求になっています。このことを、日本貸金業協会から公表されているデータをもとに見ていきます。

過払金返還額と利息返還に伴う元本毀損額の推移

日本貸金業協会のホームページには、過払金返金額と利息返還に伴う元本毀損額のデータが掲載されています。

このうち、過払金返金額は、①完済した後で請求し、過払金返還を受けた場合、②完済前に請求し、過払金返還を受けた場合に計上されます。また、利息返還に伴う元本毀損額は、ⅰ完済前に請求し、過払金返還を受けた場合、ⅱ任意整理手続きでの引き直し計算で借入元本が減額になった場合に計上されると考えられます。そのため、完済してから過払金請求をする人が多ければ、過払金返金額の比率が大きくなると考えられますし、逆に完済前に過払金請求をする人が多ければ、利息返還に伴う元本毀損額の比率大きくなると考えられます。そこで、日本貸金業協会のホームページに掲載された、過払金返還額、利息返還に伴う元本毀損額を掲載するとともに、2つの金額の比率のデータを見ていきます。

 

利息返還金(Ⅰ) 元本毀損額(Ⅱ) Ⅰ÷Ⅱ
2010年 5519億円 3439億円 1.60倍
2011年 5477億円 2436億円 2.25倍
2012年 3931億円 1181億円 3.33倍
2013年 3100億円 656億円 4.73倍
2014年 2798億円 504億円 5.55倍
2015年 2703億円 461億円 5.86倍
2016年 2658億円 384億円 6.92倍
2017年 1753億円 228億円 7.69倍
2018年 1442億円 184億円 7.84倍
2019年 1248億円 158億円 7.90倍
2020年 1169億円 143億円 8.17倍
2021年 1154億円 144億円 8.01倍
2022年 1007億円 128億円 7.86倍

 

以上のデータを見ると、全体として過払金請求が減っていく中で、元本毀損額よりも過払金返還額の比率がかつてより高くなっていることが分かります。これは、過払金返還請求の中でも、完済してからの請求の比率が高くなり、取引途中での請求の比率は低くなっているためと思われます。

完済後請求の比率が高くなり、取引途中での請求の比率は低くなっている理由

過払金請求の中でも、完済後の請求の比率が高くなっている理由としては、以下のものが考えられます。

2010年頃は、貸金業者に対する支払いが厳しくなって任意整理をした場合に、高い利率での取引であることが多く、引き直し計算の結果として元本が毀損しているケースが多くあったと思われること
現在は、貸金業者に対する支払いが厳しくなって任意整理をした場合に、取引当初から利息制限法内の取引ということが多く、元本毀損しないケースが多いと思われること
現在過払金請求をする人は、取引期間が長いことが多い結果、取引途中で請求をした場合に、元本毀損額と比較して、相当程度大きな過払金が発生しているケースが多いと思われること

弁護士によるまとめ

冒頭の質問に対する答えは、データ上も、完済してからの請求が多いということになります。完済前の場合、信用情報の懸念がありますので、完済してから請求しようという方も多いと思います。ただ、貸金業者からの借入は完済するまでに時間がかかることも多く、完済してからとなるとなかなか過払金請求に行きつかないこともあります。そのため、当事務所では、貸金業者と取引中の方について、信用情報の問題を生じないようにしつつ、過払金の有無を調査する手続きをお受けしています(※貸金業者への返済に問題がない等、調査のための一定の条件があります)。

完済して過払金のことが気になるという方も、貸金業者と取引中で過払金のことが気になるという方も、当事務所では相談無料・調査費用無料で過払金調査の手続きをお受けしています。一度お問い合わせください。
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