過払金返還請求に関する法律の条文
はじめに
消費者金融やクレジットカード会社から高利で借入をしていた場合、過払金返還請求をすることが可能です。ただ、これは当然の話ではなく、様々な法律の条文があって初めて可能になっているものです。このページでは、過払金返還請求に関する法律の条文を見ていきます。
過払金返還請求に関する法律の条文
① 民法703条(不当利得の返還義務)
民法703条は、「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、‥これを返還する義務を負う。」と定めています。貸金業者は、利息制限法の制限利率を超える利率を設定して利益を受け、借主に損失を及ぼしたと言えますので、この条文により過払金の返還義務を負います。過払金返還請求の最も基本的な条文と言えるでしょう。
② 民法704条(悪意の受益者の返還義務等)
民法704条は、「悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。」と定めています。過払金返還請求における悪意の受益者とは、簡単に言うと、貸金業者が、利息制限法の制限利率を超える利息(グレーゾーン金利)を受領できないことを知っていたというような意味です。
過払金返還請求をする場合に、貸金業者が悪意の受益者であり、過払金利息が付加されるかはかつて争いがありましたが、現在では、貸金業者が悪意の受益者ではないと判断されることはほぼ考えられません。そのため、法的には、ほとんどの場合、過払金に利息が付加されて返還されることになります。悪意の受益者についての詳細は、下記のページをご覧ください
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③ 民法705条(債務の不存在を知ってした弁済)
民法705条は、「債務の弁済として給付をした者は、その時において債務の存在しないことを知っていたときは、その給付したものの返還を請求することができない。」と定めています。過払金返還請求の場面で言うと、借主が返済をする際に、実は借金がないことを知っていたときは、過払金返還請求ができないということになります。
ただ、この条文があることで、借金の返済が非債弁済と判断されて過払金請求ができなくなるケースはほぼないと考えられます。非債弁済についての詳細は、下記のページをご覧ください。
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④ 利息制限法1条(利息の制限)
過払金返還請求においては、利息の上限を定めた利息制限法1条が重要な条文と言えます。具体的には、以下のように定められています。
金銭を目的とする消費貸借における利息の契約は、その利息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分について、無効とする。
一 元本の額が10万円未満の場合 年二割
二 元本の額が10万円以上100万円未満の場合 年一割八分
三 元本の額が100万円以上の場合 年一割五分
貸金業者は、例えば、50万円の貸付について29.2%といった利率を設定していました。そのため、設定されていた利率と、利息制限法の上限利率の差の分について、過払金として返還請求ができます。利息制限法1条の解釈に関する詳細は、下記のページをご覧ください。
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⑤ 貸金業法旧43条1項
先ほど、貸金業者は、利息制限法の上限利率を超える利率を設定していたと記載しましたが、なぜそのような利率を設定していたのでしょうか。利息制限法上、上限利率以上を設定することができないのは明らかなようにも思えます。それにもかかわらず、高い利率が設定されていたのは理由があり、貸金業法旧43条1項で、一定の要件のもと、利息制限法の上限利率を超える利率の設定が認められていたからです。具体的には以下のように定められていました。
貸金業法旧43条1項
少し分かりにくい条文ですが、以下の①~④の要件を満たすことで、利息制限法の上限利率を超える利率の設定が認められていました。
① 貸金業者に対する利息または損害金の支払であること
② 貸金業法17条所定の記載要件を満たした書面が借主に交付されたこと(17条書面の交付)
③ 貸金業法18条所定の記載要件を満たした書面が借主に交付されたこと(18条書面の交付)
④ 法定利息を超える金銭を、利息または損害金として、任意に支払ったこと(任意性の要件)
一見簡単に要件が認められそうですが、裁判所において厳格な判断が積み重ねられ、最終的に、最高裁判所でみなし弁済が認められることがほぼなくなる判断がされました。みなし弁済についての詳細は、下記のページをご覧ください。
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⑥ 民法166条1項(債権等の消滅時効)
消費者金融やクレジットカード会社との取引で発生した過払金は、いつまで経っても請求ができるわけではなく、一定の期間が過ぎると消滅時効により請求ができなくなります。消滅時効は、民法166条1項で以下のように定められています。
民法166条1項
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。
過払金も債権の一種ですので、上記の条文により、長期間請求しない場合は、消滅時効により請求ができなくなります。過払金の消滅時効についての詳細は、下記のページをご覧ください。
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⑦ 貸金業法19条・貸金業法19条の2
貸金業者から借入をしたり、返済をしたりすると、その都度取引明細書面が発行されます。その書面が全てあれば、過払金が発生しているか、発生しているとすればいくら発生しているかを明らかにできます。しかし、借主がその書面の全てを保管しているケースは少ないと考えられ、借主が保管している書面だけで過払金を算定するのは困難です。そのため、貸金業法19条・19条の2で、貸金業者には、帳簿の保存と、開示義務があることが定められています。具体的には以下のように定められています。
貸金業法19条(帳簿の備付け)
貸金業法19条の2(帳簿の閲覧)
この条文により、貸金業者から取引履歴が開示され、借主が過払金を算定することが可能になります。取引履歴の開示についての詳細は、下記のページをご覧ください。