過払い金回収コラム

過払金回収の際の非債弁済の問題点

更新日 2022/10/21
この過払金コラムを書いた弁護士
弁護士 羽賀 倫樹(はが ともき)

出身地:大阪府出身、奈良県育ち。出身大学:大阪大学法学部。

はじめに

消費者金融やクレジットカード会社に過払金を請求する際、非債弁済の争点が問題になることがあります。非債弁済というのは、債務者が、債務が存在しないことを知りつつ弁済(返済)をした場合、その分の返還を求めることができないというものです。具体的には、民法705条で「債務の弁済として給付をした者は、その時において債務の存在しないことを知っていたときは、その給付したものの返還を請求することができない。」と定められています。この条文は貸金業者に対する弁済(返済)についても適用されますので、借金の返済の時に実は借金がないことを借主が知っていたときは、その分の過払金返還請求はできなくなります。

この非債弁済の争点ですが、裁判所の判断が出ているケースは多くないと思われますが、非債弁済と判断されて過払金請求ができなくなるケースは以下に記載する通りほぼないと考えられます。

非債弁済と判断されて過払金請求ができなくなるケースがほぼないと考えられる理由

上記の通り、借金の返済の時に実は借金がないことを借主が知っていたときは、非債弁済として、その分の過払金返還請求はできなくなります。そのため、非債弁済が成立するための要件である「債務の存在しないことを知っていたとき」とはどのような場合をさすかが問題になります。

この点について、貸金業者から非債弁済の主張がされるのは、①利息制限法の制限利率を超える利率の取得を認めるみなし弁済がほとんどの場合認められないことが確定した、平成18年1月13日の最高裁判所判決以降に過払金が発生した場合、②借主が貸金業者から取引履歴を取寄せた後に過払金が発生した場合、③ ②に加え、弁護士に引き直し計算を依頼した後に過払金が発生した場合等が考えられます。

貸金業者から非債弁済の主張がされる可能性のあるケース

利息制限法の制限利率を超える利率の取得を認めるみなし弁済がほとんどの場合認められないことが確定した、平成18年1月13日の最高裁判所判決以降に過払金が発生した場合
借主が貸金業者から取引履歴を取寄せた後に過払金が発生した場合
②に加え、弁護士に引き直し計算を依頼した後に過払金が発生した場合等

確かに、上記①~③のような場合であれば、借主は過払金が発生している可能性があることを認識している可能性があります。特に③の場合は、借主が、過払金が発生している可能性があることをより強く認識していると言えるかもしれません。

しかし、民法705条の解釈上、「債務の存在しないことを知っていたとき」の意義は狭く厳格に解されており、弁済時の贈与意思ないし贈与意思に準ずる財貨喪失の意思の立証までが必要とされています。消費者金融等に対する返済については、金銭消費貸借の契約書、請求書、受領書における元本弁済額と利息金額に関する不明瞭な記載、請求時ごとに当該利息金が利息制限法に違反しているにもかかわらずそれを明示しない記載がある場合には、非債弁済は認められないと考えられています。利息制限法に基づく引き直し計算をすると貸付金が残っていない状態で、貸金業者から貸付金が残っていると借主に請求しておきながら、借主から返済を受けるとその分を返さないというのは不合理な主張と言わざるを得ないため、上記のように解釈されていると思われます。

そして、消費者金融と取引する際に交付される書面には、利息制限法に違反している場合にそのことが記載されることはありません。そのため、上記①~③のような場合でも、非債弁済は認められません。

以上から、非債弁済と判断されて過払金請求ができなくなるケースはほぼないと考えられます。例外的に非債弁済と判断されて過払金請求ができなくなるケースがあるとすれば、消費者金融側から利息制限法違反があることを認め、債務の残高は0円であり、以後の返済は受け付けないと明示したにもかかわらず、借主から返済が行われたような場合に限られると思われます。

非債弁済が主張されることの実際上の問題点

以上から、最終的に非債弁済により過払金返還請求が認められないと判断されることはほとんどないと言えます。ただ、貸金業者から非債弁済の主張があると、こちらの請求する過払金の額と貸金業者からの提案金額に大きな開きができて、裁判前に和解することが難しくなったり、和解金額が低くなる恐れがあります。また、裁判上で非債弁済の主張があると、和解できるまでに時間がかかったり、裁判前と同じく、和解金額が低くなる恐れがあります。

貸金業者としては、最終的に非債弁済の主張が認められる可能性はあまりないと考えつつも、和解金額が低くなることを狙って非債弁済の主張をしてきているのかもしれません。

弁護士によるまとめ

以上、非債弁済の争点について記載をしました。認められるための要件は厳しく、最終的に過払金を請求する側に不利な判断になる可能性は低いですが、貸金業者側から主張されると手続きが長引く恐れはあります。

なお、以上は2022年時点の情報に基づいて記載をしています。ただ、裁判例の蓄積は乏しく、今後の裁判所の判断によっては状況が変わる可能性もありますので、留意が必要です。
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