過払金利息と回収できる過払金の関係

更新日 2023/05/20
この過払金コラムを書いた弁護士
弁護士 羽賀 倫樹(はが ともき)

出身地:大阪府出身、奈良県育ち。出身大学:大阪大学法学部。

1はじめに

貸金業者との間で、利息制限法所定の制限利率を超える利率で取引を継続していると、どこかの時点で過払金が発生します。そして、法的には、過払金には利息が付加されます。それでは、この過払金利息はどの程度の金額になるのでしょうか。近時は預貯金の利率も低く、過払金利息といっても大したものではないと思われている方もいるかもしれません。

このページでは、過払金利息がつくかつかないかでどれくらい過払金に差が出るかについて見ていきます。

2過払金利息に関する基礎知識

 ⑴ 利率

過払金が発生した場合に付加される利率は、過払金が発生したのが2020年3月31日までの場合、年5%です(民法付則(平成29年6月2日法律第44号)15条1項、改正前の民法404条、最高裁判所平成19年2月13日第三小法廷判決 民集第61巻1号182頁)。また、過払金が発生したのが2020年4月1日以降の場合、年3%または変動後の法定利率になります(民法404条2項・3項。2026年3月31日までに発生した過払金に付加される利率は年3%となっていますが、2026年4月1日以降に発生する過払金に付加される利率は変更される可能性があります)。

 

 ⑵ 利息の発生時期

過払金に対する利息がいつから付加されるかですが、取引終了時ではなく、過払金が発生した時からになります(最高裁判所平成21年9月4日第二小法廷判決  民集第63巻7号1445頁)。

 

 ⑶ 過払金利息のポイント

以上の過払金利息の記載の中で重要なのは、以下の2点です。

 

過払金利息は年5%または年3%と、それ自体必ずしも小さいものではないこと
過払金が発生した時点から過払金利息が発生すること。過払金は基本的には完済してから10年間は請求ができるため(改正民法の2020年4月1日施行前の民法166条1項、167条1項)、過払金を回収するまでに、場合によっては何十年分もの過払金利息が付加されることがあります。

3実際に過払金に付加される過払金利息

それでは、以上の情報を基に、実際に過払金に付加される過払金利息がどれくらいになるか実例を基に見ていきます。

(1)前提とする事例1

・ 昭和56年に貸金業者とリボルビング取引を開始

・ 令和元年まで38年間貸金業者と取引を継続

・ 取引枠は最大で200万円

・ 貸付利率は当初は30%超

・ 引き直し計算をすると昭和60年からは常時過払状態

・ 貸金業者から実際に借り入れをした金額は約527万円

・ 貸金業者に返済をした金額は約1264万円

・ 上記の差額は約737万円

 

以上の事案で、当事務所が過払金を計算したところ、過払金利息を付加しない場合、約727万円になりました。一方、過払金利息を付加すると、過払金元金と過払金利息の合計で約1300万円となり、実際に1300万円の過払金を回収できました。

過払金利息を付加するかしないかで、約573万円もの金額差が生じています。また、貸金業者から借り入れた金額と返済した金額の差額、さらに、実際に業者に返済した金額をも上回る過払金になっています。このように大きな金額になったのは、上記の通り、過払金に付加される利息が年5%または年3%とそれ自体必ずしも小さいものでないこと、過払金が発生した時点から過払金利息が発生し、昭和60年から令和元年までの34年間の利息が付加されたことによります。

(2)前提とする事例2

・ 昭和61年に貸金業者とリボルビング取引を開始

・ 令和4年まで36年間貸金業者と取引を継続

・ 取引枠は最大で300万円

・ 貸付利率は当初は30%超

・ 引き直し計算をすると平成3年以降に過払金が発生

・ 貸金業者から実際に借り入れをした金額は約1079万円

・ 貸金業者に返済をした金額は約1884万円

・ 上記の差額は約805万円

以上の事案で、当事務所が過払金を計算したところ、過払金利息を付加しない場合、約764万円になりました。一方、過払金利息を付加すると、過払金元金と過払金利息の合計で約1400万円となり、実際に1400万円の過払金を回収できました。この事例も、過払金利息を付加するかしないかで、約636万円と大きな金額差が生じています。

(3)前提とする事例3

・ 平成18年にクレジットカード会社とキャッシングリボの取引を開始

・ 当初は年20%台の利率で、平成19年には年18%に変更

・ 令和4年にまとめて完済

・ まとめて完済するまでは過払金は発生しておらず、完済時に初めて過払金が発生

・ 取引枠は最大で50万円

以上の事案で、当事務所が過払金を計算したところ、過払金利息を付加しない場合、約27万円になりました。また、過払金が発生してから請求するまでの期間が短いため、過払金利息を付加しても、合計約28万円と大きな金額差は生じませんでした。

弁護士によるまとめ

3(3)の事例のように、過払金が発生してから実際に回収するまでの期間が短い場合は、過払金利息を付加しても大きな金額差が生じません。

しかし、3(1)(2)の事例から分かるように、過払金利息を付加するかどうかで大きな金額差が生じることがあります。3(1)(2)の事例は取引期間が長く、発生していた過払金も大きいものであるため、過払金利息を付加するかどうかで特に大きな金額差が生じたと言えます。

過払金を回収する場合は、過払金利息を付加する場合としない場合の金額差や、利息を付加した金額を回収する際の時間や費用等を考慮する必要がありますが、できるだけ利息も含めた金額を回収することをお勧めしています
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