アコムと悪意の受益者(過払金利息)の判断
更新日 2022/12/02
このコラムの要点(目次)
はじめに
過払金請求をする際に、過払金に利息をつけるかどうか(悪意の受益者であるか)が問題になりうること、多くの場合法的には利息をつけるべきとの判断になることを、以下のページで解説しました。
ただ、過払金に利息をつけるべきかの判断は全ての業者について一律ではなく、異なる部分があります。このページでは消費者金融大手のアコムについて、過払金に利息がつくかどうかについて見ていきます。
アコムと過払金利息
アコムとの取引で発生した過払金に利息を付加するかについて、最高裁判所平成23年12月15日判決で以下のように判断されています。
・ | 個別貸付時に借主に交付される17条書面には、平成13年10月までは、確定的な返済期間、返済金額等の記載に準ずる記載がなかったから、この時期までに発生した過払金については利息が付加される。 |
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・ | 平成13年11月以降は、個別貸付時の17条書面に確定的な返済期間、返済金額等の記載に準ずる記載がされるようになった。 |
・ | しかし、本件では平成13年11月より前から継続して過払の状態となり、貸金債務は存在していなかったから、みなし弁済が認められる余地はなく、それまでに発生した過払金についてアコムが悪意の受益者である以上、この時期に発生した過払金についても利息が付加される。 |
以上の最高裁判所の判断から、アコムとの取引に関する過払利息は、以下のように判断されると思われます。
最高裁判所の判断に基づくアコムとの取引に関する過払利息の扱い
① | アコムとの取引で平成13年10月までに発生した過払金には利息が付加されます(貸付時に交付される書面には、平成13年11月から、確定的な返済期間・返済金額等の記載に準ずる記載がされたとの判示より。ただし、アコムは、平成13年10月より前の一時期、確定的な返済期間、返済金額等の記載に準ずる書面を17条書面として複数回交付したことがうかがわれるとも判示されていますので、より前の時期でないと過払利息が付加されない可能性もあります。)。 |
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② | 平成13年11月以降継続的に過払状態であれば過払金に利息が付加されます。 |
③ | 平成18年1月13日以降は過払金には利息が付加されます(最高裁判所平成18年1月13日判決により、アコムが採用していた契約内容ではみなし弁済が認められないことが明らかになったため)。 |
④ | 平成13年11月~平成18年1月12日までに取引を開始し、平成18年1月12日までに発生した過払金について、悪意の受益者との推定が覆され、発生した過払金に対して過払金利息が付加されない可能性あります(平成13年10月以前に取引を開始し、平成13年11月時点では過払状態になっていなかった事案についても、平成13年11月~平成18年1月12日までに発生した過払金について過払金利息が付加されないとの主張もあり得ます)。 |
上記④で、発生した過払金に対して過払金利息が付加されない可能性があると記載しました。ただ、実際には、アコム側からすると以下の問題点があります。
アコム側からみた問題点
① | 取引開始から4年強で過払金が発生するケースは多くないこと |
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② | 対象となる取引期間が短いため、過払金が発生したとしても少額にとどまること |
③ | 過払金利息の前提となる過払金が少額である上、利息が付加されない期間は平成18年1月12日までに限られるため、付加されないことになる過払利息は極少額になること |
④ | 17条書面・18条書面を証拠として提出できない取引が一回でもあると、それ以降発生した過払金に利息が付加されること(17条書面・18条書面を発行する業務体制を構築していたとの立証があれば、全部を証拠として提出しなくても過払金に利息は付加されないとの主張があり得ます)。 |
上記の内容ですが、同じく大手消費者金融であるプロミスと比較すると、個別貸付時の17条書面に確定的な返済期間、返済金額等の記載に準ずる記載がされるようになった時期が少なくとも11か月早いため、過払利息の付加についてアコムの方が争う余地が大きいと言えます。
ただ、アコム側からすると、過払利息が発生しないと主張・立証しうる取引が一部に限定されること、主張・立証できたとしても支払いを免れる過払利息が少額にとどまることになります。そのため、現状、アコムに対する過払金返還請求訴訟で、アコムが悪意の受益者について本格的に争ってくることはほとんどありません。