過払金返還額の推移

更新日 2023/08/23
この過払金コラムを書いた弁護士
弁護士 羽賀 倫樹(はが ともき)

出身地:大阪府出身、奈良県育ち。出身大学:大阪大学法学部。

はじめに

過払金調査・請求の相談の際に、「今でも過払金請求の依頼は多いですか」と聞かれることがあります。過払金請求と言われるようになってかなりの期間が経ち、今も過払金請求をする人がいるのか気になる方が多いのだと思います。

この質問に対する答えですが、10年前~15年前と比べると少しずつ減っているものの、まだまだ多くの方から過払金請求の依頼があります。この傾向は、統計から把握できる過払金返還請求全体でも同じです。ここでは、日本貸金業協会から公表されているデータをもとに、過払金返還額の推移を見ていきます。

過払金返還額の推移(2010年~2022年)

日本貸金業協会のホームページに掲載された「貸金業界の月次統計資料」によると、2010年から2022年までの利息返還額のデータは以下のようになっています。

 

利息返還金(※1) 対前年比 対2010年比
2010年 5519億円
2011年 5477億円 -0.8% 99.2%
2012年 3931億円 -28.2% 71.2%
2013年 3100億円 -21.1% 56.2%
2014年 2798億円 -9.7% 50.7%
2015年 2703億円 -3.4% 49.0%
2016年 2658億円 -1.7% 48.2%
2017年 1753億円 -34.0% 31.8%
2018年 1442億円 -17.7% 26.1%
2019年 1248億円 -13.5% 22.6%
2020年 1169億円 -6.3% 21.2%
2021年 1154億円 -1.3% 20.9%
2022年 1007億円 -12.7% 18.2%

 

※1 「利息返還金」とは、債務者等からの利息制限法の上限金利を超過して支払った利息の返還請求に伴い、現金返還した金額のことをいいます。速報・確報・翌年公表の統計で数値が変わることがあるため、実際の数値とずれが生じる可能性があります。利息返還金の合計額で、利息返還に伴う元本毀損額は含まれません。

※2 全ての貸金業者の過払金返還額の数値を合計したものではなく、年によるものの全協会員の貸付残高の70%程度のカバレッジを確保した統計データとなっています。

 

 

 

 

2023年時点で公表されているデータを基にすると、過払金返還額は毎年減っています。また、データ上過払金返還額が最も多い2010年・2011年の年間5500億円程度から、現在は年1000億円程度と、過払金返還額が5分の1程度に減っています。なお、過払金返還の実際のピークは2008年か2009年と言われることがあり、その頃と現在の過払金返還額を比較すると、減少率はさらに大きくなっていると思われます。

ただ、それでも年間約1000億円もの過払金が返還されていますので、10年~15年前と比較して減ってはいるものの、まだまだ多くの方が過払金請求を行っていることが分かります。

過払金返還額がまだまだ多額に上る理由は、推測になりますが、以下のようなものが考えられます。

 

① 貸金業者の利率は高く、また、追加の借入ができるため、債務が減りづらく、完済してから過払金請求をしようと思っていたら今になったという人がいること。

② 数年前~10年近く前に完済したものの、請求が今になったという人がいること。

③ 今過払金請求する人は、貸金業者との取引期間が長く、過払金が発生している場合、大きな金額になっているケースが多いこと(平成18年に貸金業者と取引を開始して、令和5年に完済して過払金請求をした場合、取引期間は17年になります)。

 

利息返還に伴う元本毀損額(2010年~2022年)

日本貸金業協会のホームページには、過払金返還額だけではなく、利息返還に伴う元本毀損額のデータも掲載されています。利息返還に伴う元本毀損額とは、例えば、消費者金融に100万円の借入がある状態で過払金請求をしたところ、200万円の過払金が返還されたという場合の、減額になった100万円を指します。この元本毀損も払い過ぎの利息があることで発生するものですので、利息返還額と同じように2010年から2022年までのデータを見ていきます。

 

元本毀損額(※1) 対前年比 対2010年比
2010年 3439億円
2011年 2436億円 -29.1% 70.9%
2012年 1181億円 -51.5% 34.4%
2013年 656億円 -44.5% 19.1%
2014年 504億円 -23.2% 14.7%
2015年 461億円 -8.5% 13.4%
2016年 384億円 -16.7% 11.2%
2017年 228億円 -40.6% 6.6%
2018年 184億円 -19.3% 5.4%
2019年 158億円 -14.1% 4.6%
2020年 143億円 -9.5% 4.2%
2021年 144億円 +0.7% 4.2%
2022年 128億円 -11.1% 3.7%

 

上記のデータをグラフにすると下記のようになります。

 

 

こちらは、2010年と比較すると、利息返還額以上に減少率が大きくなっています。2010年頃は債務がある状態で過払金請求するケースが多かったものの、最近は、債務がある状態で過払金請求をするケースが減っていることがうかがわれます。

弁護士によるまとめ

過払金返還請求の動向ですが、減少傾向ではあるものの、今もまだまだたくさんの方が過払金請求をしています。今さら過払金の請求をするのはどうなのかと考える必要はなく、まずは弁護士にご相談ください。
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