過払い金回収コラム

過払金回収の際の貸付停止措置の争点

更新日 2022/07/01
この過払金コラムを書いた弁護士
弁護士 羽賀 倫樹(はが ともき)

出身地:大阪府出身、奈良県育ち。出身大学:大阪大学法学部。

はじめに

過払金請求をする際に、貸付停止措置の争点が問題になることがあります。この問題点は、過払金を請求した時点から遡って10年間対象業者からの貸付を受けておらず、返済しかしていない場合に争点になります。貸付停止について業者の主張が認められると、過払金を請求した時点から遡って10年の間に返済した分しか過払金として返還されなくなります。当然、返還される過払金は少なくなってしまいます。そのため、過払金を請求する上で重要な争点と言えます。

主張の背景

この主張がされるようになった背景を解説すると、概ね下記の通りです。

主張の背景となっている判決の内容

リボ払いの取引においては、過払金充当合意が認められます(最高裁判所平成19年6月7日判決)。そして、過払金充当合意には、借主は基本契約に基づく新たな借入金債務の発生が見込まれなくなった時点、すなわち、基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引が終了した時点で過払金が存在していればその返還請求権を行使することとし、それまでは過払金が発生してもその都度その返還を請求することはせず、これをそのままその後に発生する新たな借入金債務への充当の用に供するという趣旨が含まれています。したがって、過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては、同取引継続中は過払金充当合意が法律上の障害となり、同取引により発生した過払金返還請求権の消滅時効は、過払金返還請求権の行使について上記内容と異なる合意が存在するなど特段の事情がない限り、同取引が終了した時点から進行します(最高裁判所平成21年1月22日判決)。

以上の最高裁判所の判断に関連して、消費者金融やクレジットカード会社から、貸付停止措置がされた場合、基本契約に基づく新たな借入金債務の発生が見込まれなくなり、過払金充当合意が解消される結果、貸付停止措置の時点から過払金の消滅時効が進行すると主張されるようになりました。

判断基準

この争点について、どのように判断するかですが、法律に判断要素が掲げられているわけではありませんし、最高裁判所の判断があるわけでもありません。ただ、これまで判断が出ている裁判例では、以下のような点が考慮されています。

考慮されている点

① どのような事情で貸付停止が行われたか

② 貸付停止が解消される可能性があるか

③ 貸主が貸付停止措置を借主に告知したか

④ 借主が貸付停止措置が取られたことを認識していたか

①②は、貸付停止が解消される可能性がどの程度あるかの問題になります。解消される可能性があるのであれば、過払金充当合意は解消されていないと考えることができますので、解消される可能性が高いほど、貸付停止による消滅時効の進行は認められにくくなります。例えば、業者が廃業するとなると、貸付停止が解消される可能性は低いと言えそうです。一方、総量規制の関係で貸付停止したということであれば、返済が進んだり、所得証明を提出することで貸付停止が解消される可能性があると言えそうです。

 

③④は、借主が貸付停止措置をどの程度明確に認識していたかの問題になります。過払金充当合意を一方的に解消するのは難しいと言えますので、少なくとも、借主が貸付停止措置を認識していないと、貸付停止による消滅時効の進行は認められにくくなります。例えば、借主に貸付停止を個別に通知したとなると、認識をしていたと言えそうです。一方、ATMで借入可能額を0円と表示していただけであれば、貸付停止措置を明確に認識していたとは言いにくいかもしれません。

弁護士によるまとめ

貸付停止による消滅時効の進行の争点は、上記のような基準で判断されていますが、法律や最高裁が判断基準を明示しているわけではありませんので、今後判断基準が変わる可能性がありますし、そもそもこのような争点自体が認められるかという問題もあります。

ややこしく見える問題点ですが、弁護士に手続きを依頼いただくと、この問題点の検討・判断も弁護士に任せることができます。ただ、現時点では、貸付停止による消滅時効の進行が認められてしまい、回収できる過払金が少なくなるケースもあるのは間違いありません。請求が遅くなるほど、争点が認められた場合に回収できる過払金が少なくなりますので、できるだけ早く弁護士に過払金請求を相談されることをお勧めします。
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