プロミスと悪意の受益者(過払金利息)の判断

更新日 2022/11/22
この過払金コラムを書いた弁護士
弁護士 羽賀 倫樹(はが ともき)

出身地:大阪府出身、奈良県育ち。出身大学:大阪大学法学部。

はじめに

過払金請求をする際に、過払金に利息をつけるかどうか(悪意の受益者であるか)が問題になりうること、多くの場合法的には利息をつけるべきとの判断になることを、以下のページで解説しました。

過払金回収の際の悪意の受益者の争点

 

ただ、過払金に利息をつけるべきかの判断は全ての業者について一律ではなく、異なる部分があります。このページでは消費者金融大手のプロミス(SMBCコンシューマーファイナンス)について、過払金に利息がつくかどうかについて見ていきます。

過払金利息の一般論

過払金に利息をつけるべきかどうかについて、以下の最高裁判所の判例が一般論を示しています(読みやすくするために、最高裁判所の原文に一部改変を加えています)。

最高裁判所の判例

「貸金業者が制限超過部分を利息の債務の弁済として受領したが、その受領につき貸金業法43条1項の適用が認められない場合には、当該貸金業者は、

①同項の適用があるとの認識を有しており、

かつ、

②そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情があるとき

でない限り、法律上の原因がないことを知りながら過払金を取得した者、すなわち民法704条の「悪意の受益者」であると推定される」(最高裁判所平成19年7月13日判決)。

この裁判例で、「悪意の受益者」との表現がありますが、貸金業者において上記①②の証明ができず、悪意の受益者と判断されると、過払金に利息が付加されることになります。

過払金利息付加についての判断構造

上記の通り、貸金業者において上記①②の証明ができない場合、悪意の受益者と判断されます。そして、多くの場合、以下の3つの全てについて上記①②の要件を満たさないと過払金に利息が付加されます。

貸付時に交付される書面(17条書面)について貸金業法43条1項の適用が認められないこと
返済時に交付される書面(18条書面)について貸金業法43条1項の適用が認められないこと
期限の利益喪失約款があるため返済の任意性の要件が満たされないこと

 

このうち、ウの期限の利益喪失約款の点については、最高裁判所平成18年1月13日判決が言い渡されるまでは、貸金業者において、期限の利益喪失特約下の支払であることから直ちに同項の適用が否定されるものではないとの認識を有していたとしてもやむを得ないというべきであり、貸金業者が上記認識を有していたことについては、平成19年判決の判示する特段の事情があると判断されています(最高裁判所平成21年7月10日判決)。

また、イの18条書面についても、最高裁判所平成18年1月13日判決が言いされるまでは、貸金業者において、内閣府令により他の事項の記載をもって法定事項の記載に代えることは許されるとの認識を有していたとしてもやむを得ないとして、特段の事情があると判断される可能性があります(後で紹介する最高裁判所判決の原審である東京高裁判決では、18条書面についての特段の事情を認めています。)。

以上と比較すると、アの17条書面に記載すべき内容には従前争いがあり、記載内容が不十分でもみなし弁済が認められるとの認識を有したことがやむを得ないとは言いにくいところがありますので、17条書面の記載内容をもとに悪意の受益者であるかの判断がされることが多いと言えます(後で紹介する最高裁判所判決は、17条書面についての特段の事情の有無を判断しています。)。

プロミスと過払金利息

過払金に利息を付加するかについての一般論は以上の通りですが、大手消費者金融であるプロミスの17条書面について判断された以下の裁判例があります(読みやすくするために、最高裁判所の原文に一部改変を加えています)。

最高裁判所平成23年12月1日判決

「貸金業法17条1項6号及び貸金業法施行規則13条1項1号チが17条書面に返済期間、返済金額等の記載をすることを求めた趣旨・目的は、これらの記載により、借主が自己の債務の状況を認識し、返済計画を立てることを容易にすることにあると解される。リボルビング方式の貸付けがされた場合であっても、個々の貸付けの時点で、上記の記載に代えて確定的な返済期間、返済金額等の記載に準ずる記載をすることは可能であり、かつ、その記載があれば、借主は、個々の借入れの都度、今後、追加借入れをしないで、最低返済額を毎月の返済期日に返済していった場合、いつ残元利金が完済になるのかを把握することができ、完済までの期間の長さ等によって、自己の負担している債務の重さを認識し、漫然と借入れを繰り返すことを避けることができるのであるから、これを記載することが上記の趣旨・目的に沿うものであることは、その記載がないときは17条書面の交付があったということはできない旨判示した最高裁平成17年12月15日判決の言渡し日以前であっても貸金業者において認識し得たというべきである。これに対し、例えば、次回の最低返済額及びその返済期日のみが記載された書面が17条書面として交付されても、上記の趣旨・目的が十全に果たされるものではないことは明らかである。

そして、平成17年判決が言い渡される前に、下級審の裁判例や学説において、リボルビング方式の貸付けについては、17条書面として交付する書面に確定的な返済期間、返済金額等の記載に準ずる記載がなくても貸金業法43条1項の適用があるとの見解を採用するものが多数を占めていたとはいえないこと、上記の見解が貸金業法の立法に関与した者によって明確に示されていたわけでもないことは、当裁判所に顕著である。

 

上記事情の下では、監督官庁による通達や事務ガイドラインにおいて、リボルビング方式の貸付けについては、必ずしも貸金業法17条1項各号に掲げる事項全てを17条書面として交付する書面に記載しなくてもよいと理解し得ないではない記載があったとしても、貸金業者が、リボルビング方式の貸付けにつき、17条書面として交付する書面に確定的な返済期間、返済金額等の記載に準ずる記載がなくても貸金業法43条1項の適用が否定されるものではないとの認識を有するに至ったことがやむを得ないということはできない。

 

そうすると、リボルビング方式の貸付けについて、貸金業者が17条書面として交付する書面に確定的な返済期間、返済金額等の記載に準ずる記載をしない場合は、平成17年判決の言渡し日以前であっても、当該貸金業者が制限超過部分の受領につき貸金業法43条1項の適用があるとの認識を有することに平成19年判決の判示する特段の事情があるということはできず、当該貸金業者は、法律上の原因がないことを知りながら過払金を取得した者、すなわち民法704条の「悪意の受益者」であると推定されるものというべきである。

 

これを本件についてみると、前記事実関係によれば、本件各取引において17条書面として上告人(借主)に交付された各書面には、平成14年9月までは、確定的な返済期間、返済金額等の記載に準ずる記載がなかったというのであるから、被上告人(プロミス)において平成19年判決の判示する特段の事情があるということはできず、被上告人は、この時期までに本件各取引から発生した過払金の取得につき悪意の受益者であると推定されるものというべきであり、この推定を覆すべき事情は見当たらない。

 

そして、同年10月以降は、本件各取引において17条書面として上告人に交付された各書面に確定的な返済期間、返済金額等の記載に準ずる記載がされるようになったが、それより前から本件取引は継続して過払の状態となり貸金債務は存在していなかったというのであるから、同月以降は、利息が発生する余地はなく、この時期にされた制限超過部分の支払につき貸金業法43条1項を適用してこれを有効な利息の支払とみなすことができないことは明らかである。そうすると、本件取引につき、同月以降、17条書面として交付された書面に上記の記載があったとしても、被上告人がそれまでに発生した過払金の取得につき悪意の受益者である以上、この時期に発生した過払金の取得についても悪意の受益者であることを否定することはできない。」

以上の最高裁判所判決の事案では、結論として過払金に利息を付加すべきと判断されています。ただし、「本件取引につき‥悪意の受益者である」と記載されている通り、プロミスとの取引全般について過払金に利息を付加すべきと判断したものではありません。判決内容からすると、プロミスとの取引に関する過払利息は、以下のように判断されると思われます。

 

プロミスとの取引で平成14年9月までに発生した過払金には利息が付加されます(貸付時に交付される書面には、平成14年9月までは、確定的な返済期間、返済金額等の記載に準ずる記載がなかったとの判示より。ただし、いつまで確定的な返済期間、返済金額等の記載に準ずる記載がなかったかは、事案によって異なる可能性もあります。)。
平成14年10月以降継続的に過払状態であれば過払金に利息が付加されます。
平成18年1月13日以降は過払金には利息が付加されます(最高裁判所平成18年1月13日判決により、プロミスが採用していた契約内容ではみなし弁済が認められないことが明らかになったため)。
平成14年10月~平成18年1月12日までに取引を開始し、平成18年1月12日までに発生した過払金について、悪意の受益者との推定が覆され、発生した過払金に対して過払金利息が付加されない可能性あります(平成14年9月以前に取引を開始し、平成14年10月時点では過払状態になっていなかった事案についても、平成14年10月~平成18年1月12日までに発生した過払金について過払金利息が付加されないとの主張もあり得ます)。

 

上記④で、発生した過払金に対して過払金利息が付加されない可能性があると記載しました。ただ、実際には、プロミス側からすると以下の問題点があります。

 

 

取引開始から3年強で過払金が発生するケースは少ないこと
対象となる取引期間が短いため、過払金が発生したとしても少額にとどまること
過払金利息の前提となる過払金が少額である上、利息が付加されない期間は平成18年1月12日までに限られるため、付加されないことになる過払利息は極少額になること
17条書面・18条書面を証拠として提出できない取引が一回でもあると、それ以降発生した過払金に利息が付加されること(17条書面・18条書面を発行する業務体制を構築していたとの立証があれば、全部を証拠として提出しなくても過払金に利息は付加されないとの主張があり得ます)。

プロミス側からすると、過払利息が発生しないと主張・立証しうる取引が一部に限定されること、主張・立証できたとしても支払いを免れる過払利息が少額にとどまることになります。そのため、現状、プロミスに対する過払金返還請求訴訟で、プロミスが悪意の受益者について本格的に争ってくることはほとんどありません。

弁護士によるまとめ

以上から、プロミスとの過払金請求訴訟では、ほとんどの場合過払利息が付加されることになります。そのため、当事務所では、プロミスとの訴訟で過払利息が付加されることを前提に、交渉・裁判を進めるようにしています。
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